やまがた山菜・きのこものがたり

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ハル爺の〝知恵袋〟

山形も春の気配を感じる季節。孫のナツミちゃんと弟のシンくんが東京から遊びに来ました。ハル爺から〝山のもの〟を保存する知恵を聞いた二人は、今年も山菜採りに行きたいと今からワクワクしています!

「山菜」なべ

春と秋の〝山のもの〟を一緒に食べられるのは、
昔の人の〝生きるための知恵〟なんじゃ

ハル爺

今日も、二人が大好きな山菜ときのこがたっぷりの鍋をつくって待っておったぞ。ハル爺自慢の味じゃ。ほらほら、いっぱい食べろよぉ。

シン

わぁ~い、このお鍋には森からのおくりものが入っているんだね。いただきま~す! 

ナツミ

わらびなめこしめじとびたけきくらげ……何種類も入っていて、ホントにおいしい~! 山菜は春や夏に採れるものだし、きのこは秋のものでしょ。それが、こうして一緒に食べられるなんて、すごいわ。

ハル爺

ナツミは、山菜やきのこの名前も覚えたし、いつ採れるかもよく知っているんじゃなぁ。さすがに、わしの孫じゃ。
二人とも、冬にもここに遊びに来たことがあるからわかると思うが、この山里あたりは本当に雪が多くて、半年近くも雪に埋もれるようなところじゃ。
だから昔の人は、長い冬の間の食料を蓄えるために、春から秋、4月から11月くらいまでに採れた貴重な〝山のもの〟を何とか工夫して、保存しようと考えた。それで、天日に干して乾燥させたり、塩漬けにしたりするようになったんじゃ。山菜ときのこが一緒に食べられるのも、もともとは冬を越すため、生きるための知恵なんじゃよ。

「山菜ときのこ」の干し物

繊維の強いぜんまいを干すときには、
ときどき手で揉んで柔らかくするんじゃよ

ナツミ

昔の人は、〝山のもの〟をとっても大事にしていたのね。わたし、山菜やきのこのことを、もっと知りたくなったわ。ねぇ、ハル爺、教えて!

ハル爺

それじぁ、まず干し物の話をするとしようか。干し物には、ぜんまいわらびこごみあけびきくらげとびたけなどが向いているんじゃ。沸騰したお湯に入れてサッと湯がいてから、平たいザルやムシロに広げて天日で乾燥させるんじゃよ。
一番手間のかかるのが繊維の強いぜんまいで、干したままだと小枝のように硬くなってしまうから、ときどき両手を回すようにしながら揉んで、繊維を壊して柔らかくする。かたくりの花も干し物にするが、これは細くて繊細だから、茎を棒のようなものにかけて干すがのぉ。
大きな篭いっぱいの山菜も、干すとわずかな量になるから貴重なものなんじゃ。

ナツミ

山で採った山菜はきれいな緑色だけど、干すと茶色っぽく色が変わるのね。

ハル爺

長い期間、保存するものは水分が残らないように徹底的に乾燥させるが、保存する期間が1年間くらいのときは、あまりカチカチには干さないようにするのがコツじゃな。
こうして干した物は、水やお湯に浸けて戻して柔らかくしてから料理するんじゃよ。

シン

あれっ、このフワフワしたものは何? これは山菜なの? それとも、きのこ?

ハル爺

これは、きぶのりといって、苔のように見えるが、ブナの木の上に生えるきのこの一種でな。くるみ和えにするが、霞を食べているようで、今では珍しくなったなぁ。

「きぶのり」

「あかこごみ」

「かたくり」

山菜の香りやうまみを残したまま
長く保存するために塩漬けにしたんじゃ

ハル爺

塩漬けにすると、山菜の香りやうまみを残したまま長く保存できるんじゃ。素材によって方法が違っていてな、こごみは生のままで塩漬けする。わらびは食べやすく柔らかくするために、灰で〝あく抜き〟してから塩に漬ける。
きのこはお湯でサッと茹でて、水気を切って冷ましてから塩漬けにする。きのこは食べたときに舌に残る〝えぐみ〟があったり、〝あく〟の強いものもあるからも、塩漬けにするとより食べやすくなるからな。
こうして塩漬けにしたものは、使うときに水にさらして塩抜きするんじゃよ。わしも子どもの頃、親父から一つ一つ、やり方を教わったもんだ。

ナツミ

このごま和えにしたこごみは、きれいな緑色だわ。これも、塩漬けにしたの?

ハル爺

こごみを生のまま塩漬けにすると、茶色っぽくなることがあるんだよ。それで、こごみをサッと茹でたら水に浸けて冷まして、これに少し塩をかけてポリ袋に入れて冷凍する。そうして保存すると、きれいな緑色に戻るんじゃ。昔の人の知恵と冷凍という現代の技術をあわせて、鮮やかな色になるよう保存しているというわけじゃ。

シン

なめこはどうするの? ボク、なめこのお味噌汁が大好きだから、毎日食べた~い!

ハル爺

ハッハッハ、なめこも冷凍して保存したものを自然解凍して、それを熱々の味噌汁に入れると、すぐなめこの味噌汁ができるぞ。

「ぜんまい」

「あけび」

「とびたけ」

冬には、保存した山菜やきのこと一緒に
猟師が獲った熊やたぬきを煮て食べたんじゃよ

ナツミ

ハル爺のお話を聞いたら、この山菜ときのこのお鍋には、昔の人の知恵がいっぱい詰まっているんだなぁ、すごいなぁって思っちゃった!

ハル爺

昔は、春には山で採れた山菜を食べ、暑い夏には夏野菜と川魚を食べて体温を下げながら栄養をとった。秋にはきのこ、栗やくるみといった木の実を食べ、冬に向けて栄養を蓄えた。寒い冬には猟師が獲った熊やたぬき、うさぎや山鳥などと一緒に、保存していた山菜やきのこを煮て食べたんじゃ。今では〝ジビエ料理〟とハイカラにいわれているがなぁ。
こうして長い冬を越して、雪解けの春を迎えたときには、どんなにうれしかったことか。そして、春になると山菜を食べて、冬に溜め込んだ余分な脂肪や老廃物を出して、身体を整えた。〝山のもの〟には、こうした一年のサイクルがあるんじゃよ。 

ナツミ

わたし、ますますお山が好きになったわ。今年も山菜採りに連れて行ってもらうのが楽しみ~! ハル爺、今度は干し物や塩漬けのやり方を教えてね!

シン

ボクも、お姉ちゃんと一緒にお手伝いする~! いいでしょ、ハル爺!

ハル爺

もちろんじゃとも。この山里も、もうすぐ山菜採りの季節になる。お山の神様も、ナツミとシンに会えるのを楽しみに待っているじゃろ。

 

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