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やまがた山菜・きのこものがたり
春の光に樹々の緑がキラキラと輝いて、お山に山菜の季節が訪れました。山菜採りを楽しみに、東京から山形に遊びに来たナツミちゃんとシンくん。おじいちゃんのハル爺と一緒に、今日は親戚のサチコおばさんが住む朝日町のお山にやって来ましたよ!
ハル爺
朝日町は、〝東北のアルプス〟といわれる朝日連峰を望む町でな。ここのお山も春は山菜、秋はきのこと自然の恵みの豊かなところじゃ。
さぁ、お山に着いた。ほら、あそこでサチコおばさんが手を振って待っているぞ。
ナツミ
サチコおばさん、こんにちは! 朝日町のお山に来るの、とっても楽しみにしていたの!
サチコ
二人ともお山が大好きなのね。私も昔、ハル爺から山菜採りを教えてもらったのよ。
ハル爺
サチコおばさんは子どもの頃、わしの家によく遊びに来ていたから、一緒に山に連れて行ってのぉ。いまでは山菜・きのこのことなら何でも知ってる〝名人〟じゃ。
ナツミ
やっぱりお山の空気はおいしいなぁ! 今日はどんな山菜が採れるか、楽しみだわ!
シン
ボク、昨日の夜、山菜をい~っぱい採る夢を見たんだよ! 早くお山に入ろうよ!
サチコ
お山は楽しいところだけど、気をつけないと危ないこともあるのよ。だから、お山には一人で入らないこと。一緒に行った人と声がけしながら、その声が聞こえる範囲で山菜を探すようにすると安心よ。熊よけの鈴や携帯ラジオも忘れずにね。
山菜を見つけたら、全部採ってしまわないで、次の年のために少し残しておくことも大切なのよ。そうすると、また来年の春にたくさんの山の恵みを楽しめるでしょ!
サチコ
じゃあ、さっそくお山に入りましょうね。ほら、そこにふきのとうが出ているわよ。春先には小さい花芽(はなめ)を食べて、いまの季節は伸びてきた「とう」の部分を食べるの。
この山は斜面が急だけど、いろいろな山菜が生えているから、ゆっくり探してみてね。
ナツミ
この大きい葉っぱはナニ? これも山菜なの? 食べられるのかな?
サチコ
これはうばゆり、山菜よ。中心に茎が出る前は、葉も球根も全部食べられるわ。
シン
あっ、あそこ! もみじみたいな形をした葉っぱを見つけたよ!
サチコ
シンちゃん、よく見ているわね。あれは学名がモミジガサという山菜で、この辺りではしどけと呼ぶの。山菜には、正式な学名とその地域ならではの呼び名があるのよ。たとえば、ウワバミソウはみずなとかみず、ミヤマイラクサはあいこ、イタドリはすかなやすかんぽ、ヤマブキショウマはいわだらと呼んでいるわ。
ナツミ
わらびやぜんまい、こごみのほかにもいろいろあるのね! 山菜のこと、もっと知りたいな!
サチコ
ぜんまいには男ぜんまいと女ぜんまいがあって、渦巻き部分が膨らんでいるのが男ぜんまい、平たいのが女ぜんまい。こごみも、一本ずつ生える赤こごみと、株になって生える青こごみがあるの。ナツミちゃんも、お山に通ううちに山菜の種類や見分け方を覚えられるわ。
サチコ
次は沢を渡って、向こうのお山に行ってみましょうか。滑らないよう足元に気をつけてね。
シン
ちょっと沢の水を触ったらすごく冷たくて、びっくりしちゃった!
サチコ
こっちのお山にも、しどけがあるわ。しどけと毒草のトリカブトは、葉っぱが似ているから間違いやすいのよ。にりんそうもトリカブトと似ているので、間違いやすいわね。
トリカブトは夏になると1メートル以上にも成長するけど、出たばかりで背丈が低いときは見分けがつきにくいので、間違って採ってしまいやすいのよ。よく見ると葉っぱと根っこが違うんだけど、わからないときは食べないようにしようね。
これは去年のうど殻(から)。この殻を探しながら歩くと、見つけやすいの。残った根っこから今年の新しいうどが生えていることが多いのよ。だから、全部採らないことが大切なの。
ナツミ
今日はうどやうるいも採ったし、ほととぎす・たまぶき・えんれいそう・かたくり・とりあししょうま・あざみ・アマニュウ、初めて見る山菜がいっぱいで楽しいな!
サチコ
これはこしあぶらよ。米沢の笹野一刀彫の「お鷹ぽっぽ」は、大きくなったこしあぶらの木を彫ってつくるの。
ここには珍しいちくせつにんじんがあるわ。1年に一節ずつ伸びて竹の節のように見えるから、こう呼ぶの。漢方薬にも使われる貴重なもので、これは10年以上たっているわね。
サチコ
ナツミちゃんもシンくんも、今日はよく歩いて山菜もたくさん採って、すっかり〝お山の子〟だわ。お腹が空いたでしょ。さぁ、山菜の味噌汁を食べましょうね!
シン
わぁ~い、ボクが採ったうるいが入ってるよ! いただきま~す!
ナツミ
うるいとうどと孟宗筍(もうそうだけ)の入ったお味噌汁、お山の香りがして本当においしいわぁ!
サチコ
たらの芽とこしあぶら、はりぎりの天ぷらと山菜おこわもあるから、いっぱい食べてね。
ハル爺
サチコおばさんは、山菜料理も名人なんじゃよ。おぉ、この切り和えは、うまいのぉ。
サチコ
これはこしあぶら、こちらははりぎりの切り和えよ。茹でて水気を切って、細かく刻んだものをそのまま和えてもいいけど、フライパンでから炒りして水分を飛ばしてからゴマとカツオ節と出汁を入れて和えると、またおいしいの。そのまま食べてもいいし、おにぎりに入れてもいいわ。もちろん、ハル爺の晩酌のおつまみにもぴったりよ。
ナツミ
自分で採った山菜を、自分で料理して食べられるのは最高ね! わたしもサチコおばさんからいろんな山菜料理を教えてもらって、お山の名人になろうっと!
シン
ボクも! でも、ボクはやっぱり〝大好きな山菜をいっぱい食べる名人〟がいいな!
ハル爺
はぁっはっはっはっ、二人ともいまから将来が楽しみじゃのぉ。お山も、きっと喜んでいるぞぉ。
取材協力:佐藤 育子さん