採る

ホーム > 採る > 山菜・きのこ名人 > 名人インタビュー:佐藤 育子さん

名人インタビュー

佐藤 育子さん

──山菜やきのこに特に注力されていますが、これに興味を持ったきっかけは何でしたか?

両親が山菜採りをしていて、小さい時からよく食べており山菜やきのこが好きでした。その後、両親と一緒に少しずつ山に入るようになり、両親が営んでいた山菜料理店「瑞穂」を継いでからは、お客様と一緒に野山に出かけて現場で山菜きのこ汁、てんぷら等を作り楽しんでいました。この活動の延長が「山形きのこの会」の設立となりました。
そこで出会った山菜採りの師匠から「冬虫夏草」研究の第一人者とされる埼玉県秩父市出身の植物学者、清水大典(だいすけ)先生(1915~98年)を紹介してもらい、より山に行く楽しみができましたね。

──ご自身の山菜やきのこに関する専門知識や経験を教えていただけますか?

基本として、自分が知っている山菜やきのこを採取しますが、疑問があれば仲間と相談し確認します。山で分からなかった山菜やきのこは、食用か毒性があるか調べるため袋を分けて持ち帰り、数冊の図鑑で同定を行う場合もあります。それでも同定出来ない時は、清水大典先生や諸先輩の助言を頂きながら確認しております。

──お気に入りの山菜やきのこはありますか?それはなぜですか?

それぞれに香りや歯ごたえ等、特徴があり選ぶのが難しいです。しいて言えば、「なめこ」(10月下旬~12月上旬)は好きです。また、希少な山菜やきのこが採れた時もうれしいですね。

──春夏秋冬、各季節における山菜やきのこの収穫ポイントやおすすめの調理法について教えてください。

〇春先(3~4月)は、ふきのとう
ふきのとうは、フキ味噌、てんぷら、つくだ煮、サバ煮付け等。
〇春(4~6月)になると、あさつきこごみたらの芽わらびゆりわさび本わさびうど他。
あさつきは酢味噌和えやおひたし。こごみは、胡麻和え、みそ汁、パスタと絡めても美味しい。
わらびはおひたし、煮物、みそ汁、漬物等。
ゆりわさび本わさびは、頭の先から根まで食べられます。さっとふすべて(湯に通して)冷蔵庫で冷やすことで辛さが増し、醬油漬けにしたり醤油を垂らして味わう。粕漬けも美味しい。
うどは酢味噌和え、酢醤油、煮物。
〇春(5~6月)になると、みず(うわばみそう)うるいにりんそう他。
みずうるいは酢味噌和え、酢醤油、煮物。
にりんそうはシャキシャキ感を出すため、さっと茹でてお浸し、辛し醤油、酢味噌が美味しい。
 山菜もきのこも、どんな調理方法でも美味しいのが魅力です。

──山菜やきのこの中には有毒なものもあります。安全性や注意すべき点についてのアドバイスはありますか?

山菜やきのこは、食用や毒性がわかる方と一緒に山菜採りに出かけるのが良いでしょう。採取すると、すぐ次の場所に行きたいと焦る事もありますが、山での仕分けが大事です。分からないものや不安なものは袋を分けて持ち帰り、図鑑で調べる場合は写真が違うので数冊見て同定したり、仲間に確認するのが良いでしょう。分からないものは食べないことですね。
にりんそうと毒草のトリカブトは、時に同じような場所に生育するため、トリカブトと一緒に刈り取ってしまうと誤食しやすいです。そのため、にりんそうは5月上旬頃から花芽や白い花のついたものを確認して一本一本摘み取るのが望ましいです。また、毒草のトリカブトは1m以上に伸びて6~7月頃から開花するという違いもあります。
にらと毒草のスイセンも、近いところに植えてしまい、混生して誤食しやすいです。にらの葉には特有の臭いがあり、スイセンの葉には臭いはありません。地下部にも違いがありスイセンの地下部には、丸い球根(鱗茎)があります。抜いて確認するのがいいでしょう。

にら

スイセン

──ある地域の特産の山菜やきのこについて教えてください。その地域ならではの特徴やおすすめのレシピがあれば教えていただけますか?

西川町の月山竹(ねまがりたけ)は太くて食べ応えがあります。汁物、たけのこご飯、煮物、てんぷら、炒め物等どの様にしても美味しいです。

──山菜やきのこの普及活動に取り組んでいるようですね。具体的にはどのような活動をされていますか?

近年は、「山形きのこの会」(約30名)で活動する事が多く、山菜やきのこを学びたいという問合せがあった場合には相談に乗っています。山形市の初市、県の物産市で販売し試食等も行っています。
会では、講習会を実施したり、実際に山に入り新しい芽の成長を観察、採取を行っています。また、毎年10月第1週末の2日間、東沢コミュニティセンターにおいて「東沢大きのこ展」(きのこの展示、食用きのこの鑑定、冬虫夏草等の展示)を行っていて、例年多くの方が見学に来ています。
また、毎年に5月から10月に5~6回、仙台市で開催される「山形 旬の市」で、きのこたっぷりのいも煮、うどわらび、むきたけ、ならたけ、きのこおこわ等、県産の天然山菜、天然きのこ、その加工品の即売を行ったり、買い物客にレシピ等を配布や説明してPR活動を行っています。

──山菜やきのこに興味を持っている初心者に向けて、始める際のアドバイスはありますか?

食用で安全な山菜やきのこを、家族で食べるのが第一。
・山菜やきのこは、食用や毒性かわかる方と一緒に山菜採りに出かけること。
・必要な分だけ採り、採りつくさないこと。
・料理の処理の仕方や保存方法を学ぶとより楽しめます。

──山菜やきのこに関する知識を深めるために、おすすめの本はありますか?

日本のきのこ(山と渓谷社)です。

──将来的にはどのような活動をしたいと考えていますか?

山菜やきのこの誤食をする人をなくすために、親子教室や興味関心のある方向けに活動したいです。また、仲間と一緒に、山にはこんなにたくさんの山菜やきのこがあり、美味しく頂けると言った「山のすばらしさ」を広めていきたいです。

佐藤 育子(さとう いくこ)さん

山形市在住。平成元年より山形きのこの会を創立し、様々な活動を実施している。主に春、秋には、仲間と山に入って山菜、きのこ採りを楽しむとともに、誤食防止の指導を行っている。また秋には、食用きのこ、毒きのこ、食べられないきのこなどの鑑別や料理方法、保存方法などの研修会を行っている。

 

一覧へ戻る