やまがた山菜・きのこものがたり

ホーム > やまがた山菜・きのこものがたり > 秋のきのこ採りのお話

やまがた山菜・きのこものがたり

秋のきのこ採りのお話

秋色に染まっていた山の木々が葉を落とす頃、東京からナツミちゃんと弟のシンくんが山形にやって来ました。今日は、おじいちゃんのハル爺にきのこ採りに連れて行ってもらう約束で、二人ともはりきっています!

「なめこ」

お山の倒木や落ち葉を食べて分解してくれる
きのこは「森の掃除屋さん」なんじゃ

ナツミ

わぁ、お山はすっかり木の葉っぱが落ちているわ。初めてのきのこ採り、楽しみにしてたの! 
お山のきのこは「天然もの」っていうんでしょ!

ハル爺

おぉ、ナツミはよく知っているなぁ。それじゃあ、二人にはまだちょっと難しいかもしれないが、お山に入る前にきのこのことを教えておこうかのぉ。
お山に自然に生えた野生のきのこが「天然もの」。〝ほだ木〟といってブナやナラなどの木を伐った丸太に、きのこの菌を植えて生えてきたのが「原木栽培」のきのこじゃ。
きのこは動物でも植物でもない「菌類」という生き物でな、きのこ菌は森の中の倒れた木や切り株、立ち枯れした木の幹や枝、落ち葉や木の実、枯れ草、動物のフンや死骸などから養分をとって大きくなる。そうして腐らせて分解して、土に戻す役割をしているんじゃよ。
まつたけのように、木の根っこに生えて木と栄養をやり取りして生きるきのこもあるしなぁ。

シン

へぇ~、すごいな。きのこはお山のいらなくなったものを食べてキレイにしてくれるんだね!

ハル爺

その通りじゃ。だから、きのこは「森の掃除屋さん」とも言われるんじゃよ。それに、倒れた木や切り株が、きのこを見つける目印になるというわけじゃ。

きのこにはいろいろな種類があって、
木によって生えるきのこが違うんじゃよ

ハル爺

さぁ、ここから山道じゃ。森の中に入っていくぞ。いろいろなきのこがあるから、木の根元や倒れた木のところにきのこが生えていないか、探しながらゆっくり歩いて行ってごらん。

ナツミ

あっ、見つけた! あの木の根っこのところに、きのこの傘が重なり合うようにいっぱい生えているわ! あれは何ていう名前のきのこなの?

ハル爺

くりたけじゃ。秋になるとよく採れるきのこで、くりもだしとかあかもだしとも呼ぶな。くりたけはいい出汁が出るから味噌汁や煮物、ラーメンや鍋物に入れて食べるとおいしいぞ。
きのこは軸の下のほうから、そくっと採るんじゃ。できれば、軸の下の泥やゴミのついたところをナイフで切って持って帰ると、家で洗うときに楽なんじゃよ。

シン

こっちにもあるよ! でも、お姉ちゃんが採ったきのこと、ちょっと形が違うみたい。

ハル爺

よくわかったなぁ。これはむきたけといって、半円形をしたきのこじゃ。身が柔らかくてトロンとしてツルッとした食感で、これも煮物や汁物に入れると、うまいんだ。
くりたけむきたけはブナやミズナラによく出る。ブナにはとんびまいたけも生えるし、アカマツにはまつたけが生える。木によって生えるきのこが違うんじゃ。きのこは集まって生えるから、一つあったら、その周りをよく見るようにな。

「くりたけ」

「くりたけ」

「むきたけ」

「くりたけ」

食べられるきのこと毒きのこがあって、
これを見分けるのはなかなか難しいんじゃ

ナツミ

秋のお山は森の中が遠くまでよく見えて、春に山菜採りに来たときと景色が全然違うわね。

ハル爺

木の枝の葉っぱが落ちてカラッとしているから、見通しがいいんじゃよ。それで「あそこに、きのこが出ていそうだ」とずんずん森に入っていって、今どこにいるのか、わからなくなって迷ってしまうことがあるんじゃ。だから、あまり道からはずれないようにな。

シン

うん、わかった! ねぇ、このきのこはナニ? いつもハル爺がつくってくれる〝きのこ鍋〟に入っていたよ。

ナツミ

それは、きっとなめこよ! ヌルヌルした〝ぬめり〟があるもの。

ハル爺

ハッハッハ、それはなめこではなくて二人ともよく知っているえのきたけじゃよ。〝ぬめり〟があって、なめこに似ているが、付け根のところが茶色になっているじゃろ。これが天然のえのきたけの特徴じゃ。お店に並んでいる白くて細長いえのきたけは、おがくずや米ぬかなどの栄養源をビンに入れて栽培する菌床栽培のきのこなんじゃよ。

ナツミ

これがえのきたけだなんて、びっくりしちゃう! だって、なめこにそっくりなんだもの。

ハル爺

きのこは山の恵みじゃ。でも、食べられるきのこと、食べられない毒きのこがあって、普通の人はこれを見分けるのはなかなか難しいから、気をつけないとなぁ。

ブナ林

「えのきたけ」

「えのきたけ」

傘が開いている〝ひらきなめこ〟は、
味も歯ごたえもある最高のなめこなんじゃよ

ナツミ

あらっ、あそこにも、きのこ。あれは、なめこかな? それとも、えのきたけかな?

ハル爺

あぁ、あれはブナの倒木に生えているなめこじゃな。なめこは秋の早いうちから採れるが、11月に入って、寒くなって山に雪が降ってからでも成長する。そうしたなめこは〝寒なめこ〟といって、〝ぬめり〟が強くてプリプリしていて本当にうまいんじゃ。

シン

こっちの丸くて小さいきのこは、なめこの赤ちゃんなの?

ハル爺

採るには、まだちょっと早いなめこじゃ。成長して傘が開いているなめこを〝ひらきなめこ〟といって、食べると味も歯ごたえもある。これが最高の天然なめこなんじゃ。
それにしても、二人ともいっぱい採ったなぁ。さすが、わしの孫じゃ。今日は帰ったら、二人が採った、くりたけむきたけなめこをたっぷり入れた〝きのこ鍋〟にしようなぁ。

シン

わぁ~い! ボクの採ったくりたけ、いっぱい入れてつくってね!

ナツミ

お山のきのこは、ホントに森からのおくりものね。こうして森の中を歩いて、自分の手できのこを採ると、一つ一つに「ありがとう」って言って食べようと思うわ。
わたし、ますますお山が大好きになっちゃった! ハル爺、また来年もお山に連れてきてね!

「なめこ」

「なめこ」

「なめこ」