やまがた山菜・きのこものがたり

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山菜採り名人・ハル爺が語る
森の恵みの四方山話

〝山のもの〟の山菜やきのこは
昔は生きるために採ってきた食べものじゃった

ナツミ

わぁ~、このお鍋、大好きな山菜ときのこがいっぱい入っていて、おいしい~! やっぱりハル爺は山菜採り名人ね! でも、どうしてハル爺は、そんなに山のことをいろいろ知っているの?

ハル爺

今でこそ、このあたりも便利で豊かな里になったが、昔は人里離れた小さな貧しい村だった。山ばかりで畑をつくることはできないし、雪が深々と降り積もる豪雪地帯で、1年の半分近くも雪に埋もれるほど冬が長くてなぁ。
それで、この村の人たちは山に入って、〝山のもの〟の山菜やきのこを採ってきた。〝かてもの〟といって、米や麦に混ぜて炊いてご飯の量を増やしたり、乾燥や塩漬けにして保存食にしたり、腹を満たすために〝山のもの〟をあれこれ工夫して食べて命をつないできた。森の恵みをいただいて生きてきたんじゃよ。わしも小さい頃から親父について山に行って、「これは食える。これは毒だ」と教わったもんだ。

ナツミ

それでハル爺は、まるで頭の中に山の地図と辞書があるみたいに、山のことなら何でも知っているのね!

山菜鍋

行者様にふるまっていた〝山のおかず〟が
今では素朴な田舎の味で懐かしいと喜ばれてなぁ

ハル爺

ナツミにはちょっと難しい話かもしれんが、このあたりは月山・羽黒山・湯殿山の出羽三山の麓にある村なんじゃ。昔から「西の伊勢参り、東の奥参り」といわれて、出羽三山は山岳信仰の聖地とされたんだよ。
それで、この村には全国から修行される行者様が来られて、村人の家に一泊してから山に入られた。そのとき、村の人は行者様を大切に迎えて、この土地で採れた山菜やきのこの〝山のおかず〟を行者様にふるまったそうだ。

ナツミ

〝山のおかず〟はどれもおいしくて、わたし大好きよ! 何だかカラダが元気になる気がするの。

ハル爺

おぉ、そうか。ナツミはいつも〝山のおかず〟をパクパクとおいしそうに食べてるもんなぁ。
40年も前になるだろうか、農薬や化学肥料を使わない自然食品への関心が高まって、〝山のもの〟の山菜やきのこも注目されるようになった。〝山のもの〟でつくった〝山のおかず〟は決して豪華ではないけれど、今は田舎のおばあちゃんが作ってくれたような素朴な味がどこか懐かしいと、喜ばれているんじゃよ。

「ぶなかのか」の煮物

「ぬきうち」の粕漬け

「きくらげ」の酢ぐるみ和え

春まだ早く雪の残る山に
あけびの新芽が出ると山菜の季節の始まりじゃ

ナツミ

わたしは、ぜんまいの煮物となめこのお味噌汁が大好き! でも、山菜やきのこって種類がたくさんあるんでしょ?

ハル爺

春が近づいて一番最初の山菜は、あけびの新芽の木の芽(きのめ)。まだ雪が残っている山で採れる木萌から、山菜のシーズンが始まるんじゃよ。それから、山の上のほうの日の当たるところからふきのとうが出てきて、ぜんまいたらの芽こごみうどうるいねまがりだけみずと、7月頃まで次々採れるようになる。
そして、山菜が終わる頃になると、7月の後半にはとびたけなどが出始めて、きのこの季節だ。秋の初めには松茸、9月になると舞茸ぶなしめじなめこ。晩秋からはむきたけで、雪が降る頃まで採れるぞ。しいたけえのきえりんぎなど栽培しているきのこもあるから、山形ではほぼ1年を通して山菜・きのこが採れるんじゃ。

ナツミ

お正月に食べた、ぜんまいの煮物、おいしかった! ぜんまいは春に採れるのに、どうして冬に食べるの?

ハル爺

ぜんまいは生より天日に干したほうが、うまいんだ。冬場の保存食にするのは、生きるための知恵なんじゃよ。

「すすたけ」ご飯、なめこ味噌汁、山菜のみそ漬け(ふき、わらび)

山の湧き水や清らかな雪解け水
おいしい山の水がおいしい山菜を育てるんじゃよ

ナツミ

山形は空気もお水もおいしいし、山菜やきのこもおいしいし、わたしは山形に来るのがとっても楽しみなの!

ハル爺

ナツミは、よくわかってるのぉ。山形の山菜やきのこがおいしい理由は、水がおいしいからでもあるんじゃよ。特に山形の山菜は、長い年月をかけて地表に湧き出した山の湧き水や、清らかな雪解け水で育つから、んまい。それに、アク抜きをしたり、お浸しにしたりするときも、きれいな水を使うからなぁ。
だから、この山菜ときのこの鍋には、自然から与えられた大きな恵みと、ずっと昔から受け継がれてきた知恵、この土地ならではの食文化がたっぷり入っているというわけなんじゃ。

ナツミ

今度、山形に遊びに来たら、わたしも山菜採りに行きたいな~! 一緒に連れて行ってね、ハル爺!

ハル爺

もちろん連れて行くとも。ナツミという名前は「山の菜を摘む」で「菜摘」と、わしが名付けたんじゃよ。

ナツミ

ホント!? それは知らなかったわ。そうしたら、きっとわたしもハル爺のように〝山菜採り名人〟になれるわね!

「赤こごみ」の煮物

「かたくり」の煮物

「ますたけ」の煮物